喫煙トラブルが増加の傾向
リモートワークで借主が自宅にいる時間が増えたことで、
ご近所トラブルも増加しているようです。
SNSを見ると「下の階のタバコの臭いでテンションが下がる」などの、
タバコ関連の悩みを吐露する投稿が目につきました。
<喫煙トラブルが増加の傾向>
厚労省2018年調査によると日本の喫煙率は17.8%(男性29%、女性8.1%)です。
かつては50%を超えていましたが今では少数派となっており、
分煙傾向の高まりからタバコを嫌う人も増えています。
2020年4月には改正健康増進法が施行され、
利用者の多い鉄道や飲食店など屋内では原則禁煙となりました。
しかし賃貸住宅などの「個人が居住の用に供する場所」は適用されていません。
その一方で、法律は喫煙者へ配慮義務を掲げています。
<喫煙の際の配慮義務とは>
【喫煙の際の配慮義務】(健康増進法第27条第1項関係)
何人も特定施設及び旅客運送事業自動車等の喫煙禁止場所以外の場所において、
喫煙をする際、望まない受動喫煙を生じさせることがないよう、
周囲の状況に配慮しなければならない。
つまり、
・できるだけ人がいない場所で喫煙すること
・子どもや健康不安のある人、
特に配慮が必要な人が集まる場所では喫煙を控えること
となっています。
この配慮義務を踏まえれば、
集合住宅のベランダは喫煙を避けるべき場所にあたるとも考えられます。
ベランダは共有部分とする考え方が一般的ですので、
管理規約で喫煙を禁止することができます。
実際に区分所有のファミリー向けマンションでは、
ベランダを禁煙とする事例は増えているようです。
また、たとえ居室内であっても、換気扇の排気口位置によっては、
他の部屋にタバコの副流煙が向かうこともあるようです。
<ある禁煙ルールの事例>
ファミリー向け賃貸住宅を所有する大家さんは、
喫煙者の退去した部屋がヤニで黄色く汚れている点に頭を悩ませていました。
もちろん退去後に壁紙は貼り替えますが、
インターフォンや火災警報器、
コンセントカバーなどが黄色く変色してしまうのが残念でなりません。
リフォーム会社にも相談しましたが、
プラスチック部分に着いたヤニ汚れは落ちないと説明されました。
ただ、「禁煙ルールにしてる賃貸住宅がある」
と教えられたので自身でもやってみることにしたそうです。
具体的には契約書に建物内での喫煙を禁止する事項を記載して、
了解の上で入居してもらうようにしました。
もし禁止事項を破った場合は、先にあげたインターフォンや火災報知器などの、取り替えにかかった実費はもとより、
ヤニで変色した壁や天井のクロス貼り替え費用を請求できるようにしました。
化学物質のアレルギー体質である男性からは、
「禁煙の賃貸住宅を探していた」と喜ばれたそうです。
結局、禁煙を導入してから5年間以上経過しています。
目に見えるメリットとして、
喫煙者の部屋と比べると気になっていたインターフォンや火災警報器、
コンセントカバーは新品時と変わらない状態に見えるそうです。
想定外に好影響だったのがユニットバスや換気扇や床などの、
契約書に記載した箇所以外もキレイに使ってくれるようになったことです。
「禁煙ルール」ということで、キレイ好きな入居者が多くなるのか、
それとも神経質な大家さんと思われているのか。
理由はどうあれ、原状回復の手間とコストが減り、
リフォーム会社のスタッフからも驚かれたようです。
<まとめ>
これはファミリー向け賃貸住宅のひとつの事例に過ぎません。
ただ、最近では煙の出ない加熱式タバコなどを愛用する人も増えていますので、
喫煙者の権利にも配慮しつつ、
加熱式は許可するなどの弾力的な対策も選択肢の一つとなってきました。
喫煙マナーは時代によって変化していますので、
賃貸住宅のルールも時代に合わせて考えても良いかもしれません。
まずは不動産管理会社に相談することをお勧めします。